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法廷占拠 爆弾2|呉勝浩、スズキタゴサクの未練と弱点を考察、ネタバレ解説

法廷占拠|爆弾2

Audible版、法廷占拠 爆弾2はこちら。サンプルあり。

ネタバレしていますので注意してください。

😭タゴサクの声が変わってた!

スズキタゴサクの声が、男性ナレーターから女性ナレーターに変わっていて、かなりショックでした。第1作目の『爆弾』では喪黒福造を想像されるような声が、私は個人的には気に入っていたので残念でなりません。

あのインパクトが強烈に残っているだけに、妙な違和感というか不自然な感じが終始気になった感じです。

いがぐり頭、10円禿げ、ビール腹、ずんぐりむっくりな体形、そしてイカレた思考回路の男。だったらやっぱり1作目の声が良かったなぁ。

📖あらすじを紹介

1作目の爆弾の続編、それが『法廷占拠|爆弾2』です。前代未聞の爆弾事件を起こした容疑者スズキタゴサクの裁判で起きた、法廷占拠事件を舞台にしたサスペンス。

爆弾魔のタゴサクの裁判が行われている東京地検で事件は起きた。裁判の開始直後、柴咲と共犯者が武装して法廷を占拠し、裁判員、裁判官、検事、弁護士、そして傍聴人の合計約100人あまりを人質に取る。

武装集団の要求はただ1つ。『死刑囚の死刑を直ちに執行すること。さもないと、人質を一人ずつ殺す。』と。武装集団たちは法廷に爆弾を持ち込み、要求を拒否すれば人質を殺す、爆弾を爆発させると脅し警察を翻弄する。

特殊犯捜査第一の係長高東が交渉に当たるも、武装集団の綿密に練られた計画そして人質たちへの容赦のない暴力で主導権を握られ後手後手の交渉になる。

武装集団たちはなぜこんなことを?警察と武装集団との心理戦、そして意外な展開へと進むストーリー。

タゴサクはどうなるのか?そしてこの物語の結末は!?映画化も決まった『爆弾』の続編。法廷占拠|爆弾2!エンタメと社会への問題提起を融合させた、超絶スリリングなストーリーを愉しんで欲しい!

🖤心の形って何なん!?

私、ずっと考えていたのですが、タゴサクが言う『心の形』何なんですかね?

1作目の爆弾で、タゴサクが清宮刑事に人差し指を折られるシーンがあります。そしてその曲がった指を突き出して清宮にこう言いました。『これがあなたの心の形』と。

今回の作品でも、物語の終盤で柴咲が拳銃の引き金に指を掛け、そして銃口をタゴサクに向けます。しかし柴咲は引き金を引けない。それを見たタゴサクが、『それがあなたの心の形』と言っています。

では、心の形とは一体何のでしょうか。そもそも心は見えないものだし、形などないのです。なので心の形という表現は、すごくおかしな表現なのです。

そして抽象的過ぎて、理解し難い。

例えば人間関係に於いて、人を利用して自分に利益をもたらすような付き合うをする。その一方でその利益を社会に還元するようなボランティア活動を行ったとする。

こういった、ある特定の事柄に対して、その人が無意識に判断している価値、倫理の限界地点を結び合わせ繋げたとき、その線が形作るもの=それがタゴサクが言う『心の形』なのかもしれない。

必ずしも人の本音=心の形ではなく、無数にある限界地点を結ぶことが大切なのかもしれない。例えば実社会では、ほとんどの人がルールを守るという価値、倫理を持っている。

しかしタゴサクは、その価値の限界地点が遥か先にある。つまり『ルールなんて破ったらいいじゃん!』という限界地点を持っている。

この価値、倫理を持っていると、ありとあらゆる事柄に対して、破壊的な行動を取れるようになる。良い例が殺人だ。気に入らない人間は殺せばいいし、別に知らない人間が死のうが悲しもうが知ったことではないよ、となるだろう。

それがそのまま、様々な事柄の基準になっていく。結果、その人の心の形を浮かび上がらせる。

タゴサクの場合は、人を殺すことも、自分が死ぬことも何とも思っていない、という限界地点を持っている。だから、それよりもずっと内側に限界地点がある人がタゴサクと対峙したとき、その人は簡単に手玉に取られてしまう。

なぜなら、常識の枠が違い過ぎるから。

🔐これはタゴサクの弱点では!?

スズキタゴサクはこう言っています。

『私の人生は私の唯一の財産だって。たった一つの所有物なんです。だからこいつは譲りません。』

タゴサクが唯一執着しているもの、それが自分の人生をコントロールすることだと考えます。自分が死ぬこと、人を殺すこと、そういったことに一切の躊躇いがないのは、彼が自分の人生をコントロール出来ているからです。

だから、もし彼が第三者に言われて、この人を殺しなさい、と言われても彼は行動しないはずです。なぜなら彼が自分の人生をコントロールしていないことだから。

(もちろん、彼が殺したいと思っているなら殺すでしょう。)

いずれにしても、タゴサクを苦しめること=彼の人生の所有権を奪ってやることだと言えます。具体的にはこんな感じです。

彼に猿ぐつわをし、拘束具で身体の自由を奪い、独房の中に一日中入れておく。食事は3度与えるものの人との接触は極力無くし、彼が死ぬまでその状態を続ける、というものです。

こうすることで、タゴサクの人生の所有権を奪うことが出来ます。彼が大好きなお喋りもできない。自由に色々な人と会うこともできない。こうすることで、彼に大きな苦痛を与えることが出来ると考えます。

が!しかし、こんな非人道的なことは日本では到底出来ない。

多くの人を殺す冷酷な殺人者でも、基本的人権はあるのでこのような扱いはできない。そうなると、やっぱりタゴサクに罰を与えることはできないように思うのです。

懲役刑を与えても、きっとタゴサクは刑務官の言うことを聴かないでしょう。暴力沙汰だって刑務所で起こすでしょう。

そうしたら、懲役刑も効果がない。

結局、彼を即日死刑にする以外、方法が無いということです。

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✅タゴサクが生きてみたくなった理由とは?

タゴサクがこの世に未練を持つようになった。その発言が以下の通り。

『私もう少しやりたいことが見つかったんです。もういいやって、そう思ってたはずなんですけど。まだちょっと生きてみたくなったんです。それはお嬢さん、あなた達のせいですよ。』

彼は何をしたくなったのでしょうか?爆弾を作る知識はない。教祖になる気もない。そんな彼が持っている能力と言えば本音を見抜く嗅覚、そして人を惑わす話術です。

では警察組織がタゴサクに与えた愉しさは何だったのか?

それは人を殺すことなんて、ありきたりのことじゃないはず。そんなことをタゴサクは望んではいない。彼は結果的に人が死んでしまう、という事実を受け入れているだけです。

単に人を殺したいだけなら第一作『爆弾』で爆弾場所、時間のヒントなど出さないはずです。

もちろん、爆弾計画の乗っ取りをし、自分がすべての罪を被るという隠れた目的があったとしても、彼は人を殺すことを愉しんではいないように思うのです。

では、一体なんなのか。

ひょっとすると、スズキタゴサクは自分の能力に気付いていなかったのではないか?

彼にとって当たり前だった悪魔染みた人心掌握術、欲望を見抜く嗅覚、それを掛け合わせた他人に与える強烈な影響力。そういったスキルを他人は持っていない、そこに気付いてしまったのではないだろうか。

警察組織ですら、タゴサクに近い能力を持った人間は類家くらいだった。

だったらこのスキルを活用して、もっと他人を惑わし欲望を解放し影響を与えよう、こう考えたのではないだろうか。

当然、欲望の解放=本能による行動なので、社会秩序は乱れていくことになる。その様を見てみたいと思ったのではないだろうか。

それは爆弾を爆発するよりも、彼を愉快にさせるのではないかと思うのです。彼と同じような人間が増殖していく社会、それを自分が生み出している愉しさ。

誰にも気に留められなかった人生、卑下し続けた人生を生きていた自分が、社会を変えている喜びを今回の法廷占拠事件で知ってしまったのかもしれない、と考察しました。

この記事を書いた人
まさ

小説の構造・結末・テーマを徹底考察。
「ただ読むだけ、聴くだけでは終わらせない」
考察の過程で、作品に込められた意図や、物語の裏にある仕掛けを読み解くのが醍醐味。
特にミステリー好きな方に、新たな視点を提供できれば嬉しいです!

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