ネタバレしていますので注意してください。
🌍大久保佳代子の声が世界観とマッチ
大久保さんの声が何となく間が抜けた感じで、コンビニ人間の世界観と凄く合っているように感じたんですよね。
特に古倉恵子が『一般的』という人間から、大きく外れているので、思考、行動、表現の仕方に至るまで、それら全てを描写する大久保さんの声がマッチしていた。
なんか、こう『ぬぼーっ』とした感じ。悪い意味じゃないけど、私にはそれがまた面白かった。
読書とはまた違った良さが、オーディブル版にはあるのでぜひ試しに本を聴いてみてほしい。
👀古倉恵子は神メンタルの持ち主
コンビニ人間を聴き終わって思ったこと。それは主人公の恵子は神メンタルの持ち主だってことです。
なぜなら、周囲がどれだけ古倉恵子が変だ、普通じゃない、って言っても本人にはそれが分からない。そして大して気にしていない。
だから気分が落ち込むとか、メンタルが病むとか一切ない。物語ではコンビニを辞めたあと、引き籠り人間にはなっていたが、そこから狂気が生まれそれが社会に向かうなんてことはなかった。
読者側からすると、恵子のような人間は気持ち悪い(確かにそういった面もあるが)、と思うかもしれない。
しかし、彼女が周囲の人間を傷つけただろうか?言葉や肉体で人を傷つけただろうか?そんなことは全くない。
彼女は彼女の思考と常識で生きているだけだ。周囲の誰に何を言われても動じない。喜怒哀楽が欠落しているが、彼女のメンタルは常に穏やかな水面のような状態だ。
これを神メンタルと言わず、なんと表現したらいいだろうか。
そこで私は考察してみた。なぜ古倉恵子のメンタルは常に一定なのか!?

・感情の欠如
・思考と行動の基準を持っている
・帰属意識が希薄
😶感情の欠如
それでは1つずつ考えてみよう。まずは喜怒哀楽から。古倉恵子が感情を剥き出しにしている描写はなかったように思う。
驚いていたりする描写はあるが、感情の起伏があるような描写はなかった。つまり彼女には感情というものが感じられない。あるのは思考と行動だけだ。
🚶♀️思考と行動の基準
次に思考と行動の基準です。彼女の思考の核の部分は、マニュアル化されたコンビニの情報です。その情報を基に行動が決まっていきます。
勤務中はもちろん、勤務以外でもコンビニがいつも健全に営業できるように、彼女は自身の全て(体調、通勤、日々のルーティーン)を管理しています。
その土台になっているのがコンビニ営業です。
😑帰属意識の欠如
そして最後に帰属意識の欠如。
人間というのは、多かれ少なかれ帰属意識があります。大きな視点でいうと社会という組織。もう少し限定すると地域社会という組織。
そこから会社、家族、恋人、そういった小さな組織への帰属意識です。
この意識があるからこそ、人間は社会性を保ち帰属しているからこそメンタルが安定しやすい側面もあります。
しかし古倉恵子にはその帰属意識がほぼない。ひょっとしたら無いと言ってもいいかもしれない。
そして社会や家族への帰属意識が希薄だからこそ、彼女は怖いものがないのです。例えば一般的な普通を当て嵌めて考えてみましょう。
あなたが急に会社から解雇された不安になりませんか?
家族がいなくなり、自分が1人ぼっちになったら怖いと思いませんか?ええ、普通なら不安や恐怖を抱きます。
しかし古倉恵子にはそれがないのです。なぜなら彼女は日本に星の数ほどあるコンビニと繋がればそれで十分だからです。
社会、家族、会社、恋人、そういった組織がなくなっても問題ありません。コンビニがあればいいのです。
以上のことから、古倉恵子の神メンタルの源泉が見えてきました。
言語化するとこうです。
自分の信条を持ちそれに従い行動し、特定の組織に依存することなく、感情を抑え理性的であることがメンタルを安定させる秘訣である。
私はそう考察しました。
⚠️人間の残酷さをコミカルに
コンビニ人間の物語では、変な人、という設定で古倉恵子、そして白羽が登場します。変な人なのでマイノリティ(多数派)からしたら気持ち悪いことこの上ないのです。
なんで普通に就職しないの?
なんで彼氏、彼女作って結婚しないの?
なんで普通はこう振る舞うのに、それができないの?
この普通ができない人たちを、他人は許しません。白羽が言うように裁判にかけ追求し断罪していきます。それが人間がもつ本質の1つです。
自分たちと違う生き物を放っておくことを許しません。攻撃を仕掛けていきます。
なぜか?と問われても、きっと攻撃をする方も答えられないのです。この行動は人間のDNAに組み込まれた本能からくる行動だと私は想像しています。
しかし、高度に文明化しAI、AGIと呼ばれる人工知能まで発明した人類の社会で、正しさや普通というのはなんでしょうか!?
誰がどの基準で『それが正解』と決めるのでしょうか!?
そんなものはあり得ないのです。あるわけないのです。なぜなら私たち人間はすべて違うDNAで成り立つ有機体だから。宇宙が恐ろしく広大だといっても、あなたと同じ生物は絶対に見つかりません。
にも関わらず、大勢と違うから君は異常だと判断する、そのプロセスが既に異常なのです。コンビニ人間の物語では、こういった人間の残虐性をコミカルに描いているので、エンタメとしても楽しめます。
骨と皮だけのヒョロヒョロの白羽が風呂場で生活しているのを想像すると、『ふふふっ』と笑ってしまった自分がいました。
それを大久保さんの声で描写するので、また面白くて声を出して笑ってしまった。
🚀結末はバッドエンドなのか!?
古倉恵子は白羽が勧める会社への就職を蹴り、コンビニ店員へと戻っていく決意をします。彼女は普通と呼ばれる世界ではなく、彼女が望む世界へと向かいました。
これはハッピーエンド意外の何ものでもありません。
コンビニ店員をしている恵子は、完璧にその業務をこなしています。店内で何をどれだけどのようにすれば良いかを彼女は完全に理解しているのです。
なぜなら『コンビニの声が聞こえる』からです。
きっと務めているコンビニが廃業しても、別のコンビニへ変わればいいだけです。それにコンビニ店員なら求人も多く、体力が減ってきても働きやすい職種だと思います。引く手数多、というやつです。
そうなると、お金も稼ぎ続けることができます。
これは古倉恵子にとって、結果的にハッピーエンドというやつに違いないと私は思うけどね。